シニア犬の聴力低下:気づきたいサインと安全対策
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シニア犬が名前を呼んでも、玄関の音やお気に入りのおもちゃの音がしても反応しなくなった場合、聴力の低下が原因の一つとして考えられます。ただし、それだけが原因とは限りません。加齢による変化、耳の病気、痛み、視力の低下、認知機能の変化でも、よく似た様子が見られます。まずは動物病院で診てもらうことが最も安全です。特に、変化が突然現れた場合や片側だけに見られる場合、痛み、におい、分泌物、首をかしげる様子、ふらつきなどを伴う場合は、早めに受診しましょう。原因を確認する間は、視覚や触覚、決まった生活リズムを中心にコミュニケーションを取り、安全にも配慮しながら、愛犬に何が聞こえ、何が見えているのかを把握していきます。
シニア犬の聴力が低下しているかもしれないサイン
聴力は徐々に低下することが多いため、家族がはっきりした「以前と今の違い」に気づく前に、いくつかの変化が重なって現れることがあります。単独のサインを一つだけで判断するのではなく、普段の愛犬と比べて明らかな変化がないかを見てみましょう。
- 聞き慣れた家族の帰宅音やインターホン、食事の支度の音、おもちゃの音がしても、眠ったまま反応しない。
- こちらの姿が見えていないと、名前を呼んだり、いつもの声かけをしたりしても振り向かない。
- 音がした方向とは違う方を見たり、誰かが視界に入ってきたときに驚いたりする。
- 自分の声が以前ほど聞こえないため、吠え声が大きくなったり、小さくなったり、変わったりする。
- 以前なら気づいていた、床に落ちたおやつの音や鍵の音、音の鳴るおもちゃなど、日常の物音に気づかなくなる。
- 眠りが深くなったり、起きたときに戸惑ったり、生活リズムが変わると落ち着かなくなったりする。
- 何が起きているのかを理解するために、人の顔や手、ドア、ほかの犬の様子を以前より頼りにする。
これらのサインがあるからといって、聴力を完全に失っているとは限りません。耳の感染症、耳道の詰まり、痛み、視力の低下、認知機能の変化がある犬も、反応の仕方が変わることがあります。また、片側だけ聴力が低下することもあり、その場合は音の方向をつかみにくくなっても、まったく反応しなくなるとは限りません。「 アメリカン・ケネル・クラブのシニア犬向けガイダンス でも、こうした徐々に現れる変化がいくつか紹介されており、自宅での簡易テストだけに頼らず、動物病院で診てもらうことが勧められています。

聴力の変化が起こる理由
高齢犬では、内耳の加齢による変化が徐々に進み、時間とともに聴力が低下することがあります。そのほか、炎症や感染症、耳あかや異物による詰まり、鼓膜の損傷、外傷、大きな音への曝露、特定の病気や薬、中耳や内耳に関わる問題なども原因になります。根本的な問題を治療することで改善できる場合もあれば、簡単に聴力を回復させる治療がない場合もあります。「 Merck Veterinary Manual(メルク獣医マニュアル)の犬の難聴に関する解説 でも、原因を特定することが重要な理由が説明されています。
ゆっくり進む安定した変化よりも、突然の変化にはより注意が必要です。数時間から数日のうちに聴力が失われたように見える場合、片方の耳だけ様子が違う場合、または頭を振る、耳を痛がる、においがする、分泌物が出る、首をかしげる、ふらつく、顔つきが変わる、普段と違って過敏になるといった様子がある場合は、早めに獣医師へ相談してください。獣医師からこの犬に使うよう指示されていない限り、点耳薬、オイル、洗浄剤、手元に残っている薬などを耳に入れないでください。
動物病院で行われること
獣医師は通常、まず経過を確認します。反応が変わったのはいつか、片側だけ違うように見えるか、最近耳のトラブルや薬の使用があったか、大きな音にさらされたか、バランスや行動に変化があるかなどを尋ねます。診察では、耳道や鼓膜の確認に加え、神経学的検査と身体検査、痛みや聴力低下に似た症状を起こすほかの病気がないかの確認などを行うことがあります。
自宅で音を一度聞かせるだけでは、その犬が耳が聞こえないのか、部分的に聞こえないのか、気が散っているのか、眠っているのか、音の方向を特定できないのかを確実に判断することはできません。より確かな判断が必要な場合は、動物病院でBAER検査(脳幹聴覚誘発反応検査)や専門機関への紹介について相談することがあります。 PetMDのシニア犬の聴力低下に関するガイド でも、自宅で犬を驚かせるより、診察を受け、必要に応じてBAER検査を行う方が有用な理由が説明されています。
受診前に、気になった様子を具体的に書き留めましょう。受診を遅らせたり、愛犬に負担をかけたりせずに撮影できる場合に限り、短い動画を撮っておくのも役立ちます。愛犬が、見える位置での手の合図に反応するか、やさしく床を振動させたときに反応するか、そばにいることを確認してから触れたときに反応するかも記録しておきましょう。大きな音を何度も聞かせて試すより、変化がいつからどのように起きたかを整理して伝える方が、獣医療チームにとって有用な情報になります。
愛犬に見えるコミュニケーション方法を作る
目的は、聞こえない犬に大きな声で指示を聞かせることではありません。飼い主の存在に気づき、求められていることを理解し、好きなごほうびを受け取れる、予測しやすい方法を用意することです。
一つの目の合図と一つの行動を結びつける
繰り返し使いやすい、シンプルなハンドサインを選びましょう。たとえば、手のひらを見せる動きは「止まれ」、手を招くように動かすのは「おいで」、手を下げるのは「伏せ」といった具合です。どんなジェスチャーを選ぶかよりも、一貫して使うことが大切です。静かな部屋で、愛犬がすでにこちらを見ているときに合図を見せ、最初は一度に一つずつ教えましょう。できたらすぐに、おやつや、笑顔・やさしく触れることなど愛犬が喜ぶほめ方、または決めておいたごほうびを与えます。家族全員が同じ合図を使ってください。
毎回のやり取りは、こちらに注意を向けてもらう合図から始めましょう。愛犬の視界に入って目が合うのを待ち、その後で指示を示します。眠っている場合は、近くの明かりをつけるか、少し離れた場所で床をやさしく振動させてから近づきましょう。反応を見るために頭のそばで手をたたいたり、耳元で大声を出したり、わざと驚かせたりしてはいけません。

触覚と振動を適切に活用する
肩など、決まった場所に軽く触れることを「こっちを見て」の合図として覚える犬もいます。愛犬が起きていてリラックスしているときに、ゆっくり教えましょう。やさしく触れ、振り向いたらごほうびを与えます。床を足で軽くトントンとたたくと、感じ取れる振動を伝えられることもありますが、眠っている犬や痛みのある犬の近くで足を踏み鳴らしてよい理由にはなりません。
振動首輪はショックカラーとは異なりますが、どの製品も、どの犬にも適しているとは限りません。獣医師や、陽性強化トレーニングに詳しい有資格のトレーナーから使用を勧められた場合でも、犬が落ち着いているときに最も弱い合図だけから始め、慣れた目の合図と組み合わせて使いましょう。電気ショックは決して使用せず、罰として振動を与えないでください。犬が怖がる、混乱する、避けようとするなどの様子を見せたら、使用を中止します。「 VCAの聴覚障害または難聴の犬向けトレーニングガイド でも、ごほうびを使った学習を通じた視覚的・触覚的なコミュニケーションの大切さが強調されています。
家の中をより落ち着いて安全に移動できる環境にする
音から得られる情報が少なくなると、先の見通しが立つこと自体が安心につながります。主な寝床、食器、家具、歩く場所は、できるだけいつも同じ位置に置きましょう。部屋の配置を変える場合は、愛犬が一人で変化に気づくのを待つのではなく、起きていて飼い主が見守れるときに一緒に確認します。
- 段差や階段が見えにくかったり、足元がおぼつかなかったりする場合は、階段やそのほかの高低差のある場所にゲートを設置しましょう。
- 滑りやすい場所には滑り止めを敷き、狭い通路にはおもちゃやコード、物を置かないようにしましょう。
- 子どもやほかのペットに邪魔されず、静かに休める場所を用意しましょう。
- 愛犬から見える正面か横から近づきましょう。触れる前に、完全に目を覚ますまで待ってください。
- 来客には、犬に手を伸ばす前に目を合わせるまで待ってもらいましょう。
- 視力も低下している、または暗い部屋で戸惑う様子がある場合は、常夜灯を使いましょう。
驚いて身をすくめるのは、近づき方が急すぎたと伝えているのであって、「悪い子」だからではありません。距離をもう少し取り、動作をゆっくりにし、子どもが犬を抱きしめたり、追い詰めたり、眠っているところを起こしたりしないようにしてください。以前は穏やかだった犬が、突然、噛みつこうとしたり、物を守ろうとしたり、触られるのを避けたりするようになった場合は、しつけの問題と考える前に、痛みやほかの病気がないかを確認する必要があります。当サイトの 犬の痛みの警告サイン についてのガイドは、獣医師に相談する際に、気づいたことを整理するのに役立ちます。
屋外では安全を確保する
耳が聞こえない、または聞こえにくい犬は、車や自転車、放れている犬、呼び戻しの合図、公園の向こうから飛んでくる注意の声に気づけないことがあります。リードを着けるか、本当に安全なフェンスで囲まれた場所を利用し、門やドアの近くでは見守りましょう。愛犬の首輪に付けた迷子札の情報とマイクロチップの登録情報が最新であることも確認してください。「耳が聞こえません」と分かるタグを付けておくと、愛犬が逃げてしまったとき、呼びかけが届かない理由を見た人に理解してもらいやすくなります。
リードを外して自由にさせるかどうかを、ホイッスルや声かけに反応できるかだけで判断しないでください。まずは、気が散りにくい囲まれた場所で、目で確認できる呼び戻しの合図を練習し、こちらを振り返るたびにごほうびを与えましょう。ロングリードを使う場合は、犬や人に絡まないよう、安全に扱えるときだけ使用してください。 VCAの、耳が聞こえない犬との暮らしに関するガイド でも、耳の聞こえない犬は近づいてくる日常の危険に気づけないため、リードの使用と環境の安全確保が重要だと説明されています。
自信と動きやすさ、生活の質を支える
耳が聞こえにくくなっても、犬が楽しく過ごす力まで失われるわけではありません。安全な場所での短いにおい嗅ぎ散歩、音を必要としない知育トイ、やさしいグルーミング、日なたぼっこ、慣れ親しんだ人との穏やかな時間は、これまでと変わらず大切なものになり得ます。愛犬のペースに合わせ、疲れや不安、いら立ちがたまる前に切り上げましょう。
シニア犬の状態は、ひとつの変化だけで判断せず、全体を見ましょう。聴力の変化は、視力の低下、関節炎、歯の痛み、睡眠の変化、認知機能の変化などと同時に起こることがあります。食欲、睡眠、動き、周囲との関わり方、驚き方、好きな活動について記録しておきましょう。当サイトの 犬に見られる老化の初期サイン についてのガイドは、より幅広く確認できるチェックリストとして役立ちます。また、 犬のしっぽから読み取る気持ち についての記事も、ひとつのサインだけでなく、姿勢や状況全体を見ることの大切さを教えてくれます。
日々の暮らしでは、以前の声による合図に反応できるかではなく、愛犬がどれだけ確実に状況を理解し、驚いたあとに落ち着きを取り戻せるかで変化を見ましょう。合図を目で確認し、安全な行動を選び、驚いたあとに落ち着けるなら、新しいコミュニケーションの方法はきちんと機能しています。
早めに獣医師へ相談したほうがよい場合
愛犬が普段どおり元気に見えても、聴力に新たな変化が現れた、または悪化している場合は、獣医師に相談しましょう。次のような症状がある場合は、より早く動物病院へ連絡してください。
- 突然、または急速に悪化する聴力の変化
- 耳の痛み、頭を何度も振る、異臭、分泌物、腫れ、出血
- 首をかしげる、同じ場所を回る、ふらつく、嘔吐、力が入らない、立ち上がりにくい
- 顔の左右差が新たに見られる、まばたきがしにくい、頭の周辺を強く嫌がる
- 同じ時期に、睡眠、食欲、行動、または人や動物との関わり方に大きな変化がある
- 通常のお手入れや触れ合いも安全に行えないほど、怖がる、噛みつこうとする、または強い不安を示す
倒れる、けいれん、重い外傷、呼吸困難、立ち上がれない、または強い苦痛がある場合は、救急診療を受けてください。Texas A&Mの 耳が聞こえない犬のケアガイド でも、突然聴力を失った場合は、犬が慣れるか様子を見るのではなく、病気が原因ではないか調べるべきだとしています。
よくある質問
犬の加齢による聴力低下は、元に戻りますか?
原因によって異なります。炎症や耳の詰まりなどは治療できる可能性がありますが、加齢に伴う内耳の変化や、ほかの種類の難聴は元に戻らない場合があります。愛犬に当てはまる可能性を見極められるのは、獣医師による診察だけです。
自宅で犬の聴力を確かめるには、どうすればよいですか?
大きな音を出したり、背後から不意に驚かせたりするテストはやめましょう。代わりに、起きていてリラックスしているときに普段の音に気づくか、目で見て分かる合図に反応するかを観察し、記録してください。自宅で聴力を判断しようとするよりも、獣医師の診察や、必要に応じて行うBAER検査のほうが確実です。
耳が聞こえないシニア犬も、ハンドシグナルを覚えられますか?
はい。犬は何歳からでも目で見る合図を覚えられます。ただし、シニア犬には、より短い時間での練習、はっきりした色のコントラスト、繰り返しの練習が必要になることがあります。愛犬がこちらを見ているときに合図を示し、正しく反応したらごほうびを与え、ジェスチャーは毎回同じものにしましょう。
耳の聞こえない犬を起こすには、どうすればよいですか?
できれば、まず犬から見える位置に移動しましょう。眠っている場合は、少し離れた場所で照明をやさしく変えるか、床に軽く振動を与えて、犬がこちらの存在に気づくまで待ってから近づいてください。顔や首の近くにいきなり触れてはいけません。起こすのがいつもより難しくなった場合は、獣医師に相談しましょう。
耳が聞こえない犬でも、幸せに暮らせますか?
多くの犬は、飼い主がコミュニケーションや安全面で予測しやすい環境を整えると、うまく適応できます。愛犬が楽しめる嗅覚、視覚、動き、触覚を使った刺激や遊びも続けましょう。恐怖や痛み、混乱、その他の健康状態の変化によって日々の快適さが損なわれた場合は、対応方法を見直してください。
振動機能付き首輪を使うべきですか?
すぐに使うべきとは限りません。やさしい振動は、慎重に慣らせば役立つ犬もいますが、怖がってしまう犬もいるため、決して罰として使わないでください。獣医師または報酬を用いたトレーニングを行う、信頼できるトレーナーに相談し、効果が得られる範囲で最も弱い刺激を使いましょう。電気ショック機能は絶対に使用しないでください。
このガイドの参考にした獣医学資料
- Merck Veterinary Manual:犬の難聴
- Merck Veterinary Manual:動物の難聴
- American Kennel Club:高齢犬の聴力低下
- American Kennel Club:犬の難聴
- VCA Animal Hospitals:耳の聞こえない犬との暮らし
- VCA Animal Hospitals:耳の聞こえない犬、聞こえにくい犬のトレーニング
- PetMD:聴力が低下した高齢犬をサポートする方法
- Cornell University:高齢犬の認知症
- Texas A&M Veterinary Medicine:耳の聞こえない犬のケア
このガイドは一般的な情報を提供するものです。聴力低下の診断や、愛犬に合わせた獣医師による診察の代わりにはなりません。