老犬に見られる前庭症状:症状・動物病院での診察・回復について

読了時間
1分未満で読めます
公開済み
更新日
老犬症候群を理解する:飼い主のための総合ガイド
Table of Contents

高齢の犬が突然、頭を傾ける、よろめく、倒れる、立てないといった症状を見せたら、すぐに動物病院または救急動物病院へ連絡してください。 こうした症状は、耳や脳、神経、薬剤、けがなどに関わるさまざまな問題によって起こる可能性があります。「老犬症候群」は考えられる原因の一つを指す一般的な呼び名ですが、ご家庭で安全に判断できる診断名ではありません。

獣医師は一般に 特発性前庭症候群 という用語を、高齢の犬に突然バランスを崩す症状が現れ、原因が見つからない場合に使います。見ていると不安になる症状ですが、特発性の場合は時間の経過と適切なサポートによって改善する犬も多くいます。それでもまず優先すべきなのは、できるだけ早く獣医師の診察を受けることです。同じような症状でも、特別な治療が必要な病気が隠れている可能性があるためです。

老犬症候群とは?

前庭系は、犬がバランスを保ち、自分の頭や体がどの位置にあるかを把握するために働く器官です。内耳の構造や脳内の神経経路などから成り立っています。この仕組みに異常が起こると、犬はじっとしていても周囲が動いているように感じることがあります。

「老犬症候群」は通常、高齢の犬に突然起こる前庭系の異常を指し、最終的に特発性前庭症候群と診断されるケースで使われることが多い呼び名です。 特発性 とは、獣医師による検査で原因が特定できなかったという意味です。頭を傾けたりバランスを崩したりする高齢の犬が、すべて同じ病気だという意味ではありません。

これは、犬の認知機能不全(いわゆる犬の認知症)とも異なります。前庭系の異常は通常、突然始まり、バランスに影響します。一方、認知機能の低下は、睡眠、方向感覚、トイレの習慣、活動性、社会的な行動などの変化を通して、徐々に進む傾向があります。どちらか一方だけの場合もあれば、複数の健康上の問題が重なっている場合もあるため、症状の現れ方を獣医師に判断してもらう必要があります。

老犬症候群の症状

前庭系の症状は、突然現れることがよくあります。次のような症状が一つ、またはいくつか見られることがあります。

  • 頭を sürekliに傾けている
  • 体を傾ける、よろめく、旋回する、倒れる、片側に転がる
  • 眼球が素早く同じ動きを繰り返す(眼振)
  • 方向感覚を失う、立ったり歩いたりするのを嫌がる
  • 吐き気、よだれ、嘔吐、食欲低下
  • 食べ物や水を口にしにくい、または口にしても保てない

症状の一覧だけを見て、その発作が無害だと判断しないでください。 コーネル大学動物病院 では、緊急治療が必要になる可能性のある状態として、バランスを失うことや歩行困難を挙げています。事前に電話をかけ、何が起きたのかを正確に伝え、病院の指示に従ってください。

症状が現れたときの対処

  1. 転倒を防ぐ 階段、家具の角、プール、硬く尖った場所に犬を近づけないでください。受診の手配をする間は、同じ階にある、狭くクッション性のある安全な場所で過ごさせましょう。
  2. 動物病院に電話する 突然立てなくなった、何度も吐く、倒れる、強い苦痛がある、けいれんが起きている、呼吸が苦しそう、または症状が急速に悪化している場合は、すぐに診てもらう必要があります。
  3. 安全であれば、短い動画を撮る 少し離れた場所から、目の動き、頭の位置、立とうとする様子、歩き方を撮影してください。症状が始まった時刻も記録しておきましょう。
  4. 役立つ情報を伝える 最近の耳のトラブル、転倒やけが、新しく使い始めた薬やサプリメント、毒物に触れた可能性、食欲、嘔吐、過去に同じような症状があったかどうかを獣医師に伝えてください。
  5. 人間用の薬を与えない 獣医師から、その犬の今回の症状に使うよう指示されていない限り、手元に残っている処方薬、乗り物酔いの薬、鎮静剤、点耳薬、サプリメントなどは与えないでください。
見守られながら落ち着いた部屋で回復するシニア犬

動物病院での診察が大切な理由

前庭系の症状から分かるのは、バランスに問題があるということだけで、原因までは特定できません。考えられる原因には、中耳や内耳の病気、けが、耳に影響を及ぼす薬への曝露、炎症、血管性の病気、神経系に影響する腫瘍などがあります。高齢の犬では、原因が見つからず、特発性と判断されることもあります。

獣医師は、症状が始まった時期、眼球運動の方向や特徴、神経学的検査と耳の検査の結果、そして犬の全身状態をもとに、考えられる原因を絞り込みます。血液検査や尿検査が必要になる場合もあります。診察から中枢神経系の問題が疑われる場合、症状の経過が通常と異なる場合、または期待どおりに改善しない場合には、画像検査や獣医神経科医への紹介が勧められることがあります。

目的は、単にその発作に病名をつけることではありません。根本的な原因への治療が必要か、吐き気や脱水への対処が必要か、入院でのサポートが必要か、それとも自宅で安全にケアできるかを判断することです。イリノイ大学の獣医神経科チームは、 前庭系の発作は、けいれん発作や脳卒中に似て見えることがあり 耳や脳のさまざまな部位に起因する可能性があると説明しています。

老犬症候群はどのくらい続きますか?

回復までの期間は、原因や犬によって異なります。特発性のケースでは、症状が最も強く出るのは発症直後であることが多く、その後数日ほどで改善が始まる場合があります。バランス感覚が戻るまでにはさらに時間がかかることがあり、回復に数週間を要する犬もいます。犬がつらそうな様子もなく普段どおり過ごせるようになっても、軽い首の傾きやふらつきが残ることがあります。

この Cornell Riney Canine Health Center では、前庭症候群の犬の多くは徐々に改善していく一方、回復中は食事や水分補給、歩行のサポートが必要になることがあると説明されています。ただし、こうした一般的な経過を安心材料にできるのは、獣医師が犬を診察した後です。

犬の症状が悪化した、食べたり飲んだりできない、嘔吐が続く、新たな力の低下や行動の変化が見られる、痛がっているように見える、または獣医師から説明された期間内に改善しない場合は、もう一度動物病院に連絡してください。2回目の発症も、前回と同じだと決めつけず、診察を受ける必要があります。

獣医師の診察後に行う自宅でのケア

犬の診断に合わせて、退院時や診察時に受けた指示に従ってください。以下は看護のための方法であり、治療の代わりにはなりません。

小さく、段差のない療養スペースを作る

滑りにくい床、低くてクッション性のあるベッド、階段へ通じる出入口のない静かな場所を1か所選びましょう。家具の尖った角にはクッションを付け、方向感覚を失った犬が入り込んで出られなくなりそうな隙間はふさいでください。トイレまでの移動距離は短くし、必ず見守りましょう。犬が再びバランスを取れるようになるまで、部屋の配置を変えないでください。

引っ張らずに移動をサポートする

体に合った歩行用ハーネスや、一時的な補助具としてタオルを使うことで、トイレまで移動しやすくなる犬もいます。どの位置をどのように支えればよいか、動物病院のスタッフに実演してもらいましょう。ゆっくり動かし、1回のサポートは短時間にしてください。犬がさらに不安そうになったり、吐き気や疲れが見られたりしたら中止します。支えている犬を決してひとりにしないでください。

食事と水を取りやすくする

犬が登ったり、滑りやすい床を横切ったりしなくても届く場所に器を置きましょう。器の置き方、1回の食事量、吐き気止めについては、動物病院の指示に従ってください。飲み込むことや頭を支えることに苦労している犬に、無理に食べさせたり、シリンジで水を飲ませたりしないでください。誤嚥や脱水が心配されるため、動物病院に連絡しましょう。

回復の経過を簡単に記録する

1日に1~2回、犬が横になって休めるか、水を飲めるか、食べられるか、支えてもらえば立てるか、補助付きで数歩歩けるか、排尿や排便ができているかを記録しましょう。嘔吐や薬を与えた時間も記録してください。同じ角度から短い動画を撮影しておくと、バランスや眼球の動きに変化があるかを獣医師が判断するのに役立ちます。

補助具は慎重に選ぶ

車いす、スロープ、ペット用階段、脚の装具、目の見えない犬用のハローは、急性の前庭症状を診断したり治療したりするものではありません。めまいがある間は、新しい道具を使いこなすのが難しいこともあります。現在の段階で獣医師が勧めるサポートだけを使用し、その後に移動補助具を導入する場合も、サイズや装着状態を慎重に確認し、必ず見守ってください。

老犬症候群?それとも年齢に伴う変化?

突然の首の傾きやバランスの喪失は、この前庭症状のガイドで扱う症状です。一方、歩き方、睡眠、食欲、聴力、視力、行動が徐々に変化している場合は、より幅広い対策が必要です。こちらの シニア犬のケアチェックリスト では、こうした変化を記録し、自宅の環境を整え、動物病院で役立つ観察内容を準備する方法を説明しています。

よくある質問

老犬症候群は自宅で治療できますか?

獣医師の診察を受けずに安全に治療することはできません。深刻な原因を検討し、犬の状態が安定した後であれば、自宅での看護が回復の一部になることはあります。吐き気を抑える処方薬や点滴、耳の病気に対する治療、入院での経過観察、追加の検査が必要になる犬もいます。

老犬症候群は脳卒中と同じですか?

いいえ。前庭症状は脳卒中のように見えることがありますが、見た目だけで原因を確定することはできません。獣医師は病歴や診察結果を確認し、必要に応じて追加の検査も行ったうえで、どの病気の可能性が高いかを判断します。

老犬症候群は寿命に影響しますか?

この呼び名だけでは、寿命について答えることはできません。予後は、根本的な原因、犬が抱えているほかの病気、治療や経過への反応によって異なります。特発性前庭症候群は改善することが多い一方、別の病気が原因の場合は見通しが異なることがあります。愛犬に予想される経過について、獣医師に説明してもらいましょう。

老犬症候群は再発しますか?

前庭症状が再び起こることはあります。新たな症状が見られたら、別の病気の出来事として対応してください。特に、前回と様子が違う、長引く、力が入らない、痛がる、意識や反応がいつもと違う、けいれんがあるといった場合は、早めの診察が必要です。

参考にした獣医学資料

おすすめ商品