犬が散歩中におしっこをする理由――マーキングと排尿の違い

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近所の散歩中に木のにおいを嗅ぐ犬

はじめに

犬が散歩中にすべての木で立ち止まるのは、毎回膀胱を空にしたいからとは限りません。尿は犬にとってにおいによるコミュニケーションの一部であり、おしっこの前後ににおいを嗅ぐことで、ほかの動物が残した情報を調べています。だからといって、すべての水たまりから、相手の犬の年齢や健康状態、気分まで読み取れるわけではありません。大切なのは、尿の量や場所、姿勢、頻度、痛がる様子があるかなど、全体のパターンを見ることです。

結論から言うと

散歩中に犬が排尿するのは、膀胱にたまった尿を出すため、少量のにおいづけをするため、またはその両方である可能性があります。マーキングは、膀胱を空にする排尿とは別の行動です。木やほかの垂直な面に少量ずつ、入念ににおいを嗅いだあと何か所も繰り返して排尿する場合は、1か所で長く排尿するよりもマーキングの可能性が高いと考えられます。ただし、姿勢や尿量だけで理由を断定することはできません。行動パターンの変化、室内での粗相、痛み、何度も排尿しようとする様子がある場合は、動物病院で診てもらいましょう。

においは、犬同士のコミュニケーション手段のひとつであって、人が完全に読み解ける暗号ではありません。急かしたり、粗相を叱ったり、片足を上げたからといってすぐに縄張り行動だと決めつけたりするより、落ち着いて様子を観察するほうが、犬の状態を知る手がかりになります。

犬がおしっこの前ににおいを嗅ぐ理由

犬は嗅覚を使って周囲の環境を調べます。尿にはほかの犬の興味を引くにおいの情報が含まれているため、排尿するか、そのまま通り過ぎるか、自分もにおいを残すかを決める前に、場所をしばらく調べることがあります。木や柱などの垂直な面では、通りかかる犬がにおいに気づきやすくなります。そのため、散歩中のトイレ休憩が、短時間で済む用足しではなく、近所を入念に調査するように見えることがあるのです。

観葉植物のそばで室内に立ち、警戒した様子の犬

においを嗅いだからといって、必ずマーキングをするとは限りません。また、マーキングをしたからといって、犬が飼い主に反抗しているわけでもありません。VCAは、尿によるマーキングを屋外でも屋内でも起こりうる正常な行動と説明しています。同時に、その行動が適切かどうかは場所や状況によって判断されるとしています。特定の場所が安全でない、または排尿してほしくない場所であれば、穏やかな声で犬を呼び戻し、対立するのではなく散歩を続けましょう。

マーキングと膀胱を空にする排尿の違い

獣医学的な行動学の資料では、マーキングは社会的・嗅覚的な行動とされています。特に垂直な面などに少量の尿をかけ、複数の場所で行うことがあります。一方、通常の排尿では、膀胱が満たされているときにより多くの尿が出ます。ただし、これらは判断材料であって、自宅で原因を確定するための検査ではありません。尿路に刺激や炎症がある犬も、少量の排尿を何度も試みることがあります。普段の様子から変化が見られる場合は、健康上の問題を考えずにマーキングだと決めつけないようにしましょう。

マーキングを示唆する手がかり

  • 散歩中に短い排尿を何度も行い、その前に1か所を長く嗅ぐことが多い。
  • 木や柱、家具の脚など、垂直な物を選んで排尿する。
  • 尿量が少なく、それ以外は歩く、食べる、飲む、行動するといった普段の様子に変化がない。
  • 新しいにおい、ほかの動物の尿、新居、または生活環境や人間関係の変化があるときに、そのパターンが見られる。

マーキングは、オスにもメスにも見られ、去勢・避妊手術を受けた犬でも起こります。特定の犬種や性別、性格に限られる行動ではありません。その VCAのマーキング行動に関するガイド では、繰り返しにおいを嗅ぐことや新しい環境、ほかの動物のにおいが、マーキングに先行することがある理由を説明しています。

1回の散歩だけで判断できない理由

片足を上げて1回排尿したことや、色の濃く見える尿の跡だけで、何が起きているのかを判断しないでください。犬は、楽な姿勢かどうか、地面の状態、年齢、体の動かしやすさ、習慣などによって姿勢を変えることがあります。また、膀胱や尿道に刺激があるために少量ずつ排尿することもあります。新しく始まった行動、トイレトレーニングができていた犬の室内での粗相、いきむ、陰部をなめる、鳴く、飲水量が変わるといった様子がある場合は、まず健康上の問題として考えましょう。

尿のにおいづけで伝わること

においづけには、その場所を犬が訪れたことを示し、ほかの犬に調べるよう促す働きがあります。ほかの動物が排尿した場所に、さらに上からにおいを重ねる行動も、獣医学的な行動学の資料で報告されています。犬にとってそのにおいづけが社会的な意味を持つことはありますが、そこから人が正確なメッセージに置き換えられるわけではありません。尿の跡を1回嗅いだだけで、その犬の年齢、性別、健康状態、感情を確実に読み取ることはできません。

この違いを理解することが大切なのは、コミュニケーションと健康状態が、同じ観察の中にある別々の側面だからです。においづけをする場所や回数からは、行動パターンを推測できることがあります。一方、色やにおい、頻度、痛み、尿量の変化は健康上の問題を示す場合がありますが、判断には獣医師の診察が必要です。両者を分けて考えることで、症状を見過ごすことも、正常なにおいの調査を問題行動として扱うことも避けられます。

姿勢と場所からわかること

犬が垂直な面にマーキングするとき、片足を上げる姿勢はよく見られますが、それだけで判断することはできません。楽な姿勢かどうかや体の制限によって、しゃがんだり、前に体を傾けたり、姿勢を変えたりする犬もいます。場所も手がかりになります。垂直な物に少量ずつ何か所も排尿するパターンは、草の上で一度に多く排尿する場合とは異なります。その アメリカン・ケネル・クラブによるマーキングと排尿の比較 では、ひとつの姿勢だけに頼るのではなく、いつ、どこで、どのくらい排尿するかを見るよう勧めています。

新しい家や、マーキングをしてほしくない場所を訪れるときは、犬が落ち着くまでリードをつけ、近くで見守りましょう。VCAは、特定の場所を長く嗅いでいる様子に注意し、早めに別の場所へ誘導することを勧めています。これは罰ではなく、適切な境界線を示すための実践的な方法です。犬が落ち着いて散歩できる状態を保ちながら、その場所を守ることが目的です。

興奮や服従による排尿は別の行動

激しいあいさつの最中や、怖がっているとき、服従を示す姿勢を取っているときに、少量の尿を漏らす犬もいます。Merck Veterinary Manualでは、興奮、服従、葛藤に関連する排尿は、においづけとは異なる対応が必要な行動パターンとして扱っています。子犬では膀胱のコントロールがまだ未熟なことがあり、成犬でも、あいさつや人が近づくこと、目を合わせることなど、何らかのプレッシャーに反応して排尿する場合があります。

あいさつの勢いを抑え、犬が距離を取れるようにして、落ち着いた行動をほめましょう。粗相をした犬を叱ったり、罰を与えたりしないでください。罰は恐怖心を強め、人のそばで安心して排尿することを難しくする場合があります。行動が続く場合は、動物病院で病気が原因ではないか確認し、資格のある行動の専門家に段階的なあいさつの練習方法を相談できます。犬のサインをより幅広く読み取る方法については、こちらの記事と 犬が人に対して見せるほかのボディランゲージもあわせてご覧ください。

1回の水たまりではなく、全体のパターンを見る

尿の見た目を観察することは大切ですが、それだけで病気を診断することはできません。VCAは、正常な尿の色を薄い黄色から明るい琥珀色と説明し、濃い黄色の尿は水分が必要な状態や脱水で見られることがあるとしています。犬が頻繁に水を飲み、排尿しているときは、非常に薄い色や透明に近い尿になることもあります。1回だけ薄い尿が出たからといって、必ずしも病気とは限りません。変化が続く場合は、自宅で色の一覧表と照らし合わせるのではなく、専門家に相談しましょう。

散歩のあとに新鮮な水を飲む犬

尿の濁り、赤色や茶色、新たに強くなったにおい、尿のしたたり、陰部をなめる様子、尿の勢いが弱いこと、外に出たがる頻度の変化にも注意してください。これらの症状には複数の原因が考えられます。たとえば尿路感染症では、何度も排尿しようとする、いきむ、痛がる、血が混じる、尿がしたたる、強いにおいがするといった症状が見られることがあります。その VCAによる犬の尿路感染症の解説 では、においだけで推測するよりも、尿検査と獣医師による診察のほうが役立つ理由を説明しています。

尿の変化が見られたときは獣医師に相談を

これまで問題なく過ごしていた犬が、急に室内で排泄するようになった、外に出たがる回数が大幅に増えた、水を明らかに多く飲む、尿の量が極端に多い・少ない、尿の色やにおいに変化が続いているといった場合は、早めに獣医師の診察を受けてください。痛み、元気の低下、食欲の変化、嘔吐、腹部の不快感、陰部をなめる行動、尿の勢いの変化がある場合は、より緊急性が高くなります。詳しくは 排泄に関する問題についてのMerckの解説 では、室内での排泄をしつけやマーキングの問題と考える前に、痛みや病気の可能性を除外することが重要だと強調しています。当店の 犬の病気で見られる注意サインガイド も、獣医師に相談する前に症状を整理する際の参考になります。

緊急性のある注意サイン

何度も排尿しようとするのに尿がほとんど出ない、まったく出ない、尿が赤い・血が混じっている、または排尿時に鳴く場合は、獣医師に連絡してください。VCAは、これらを緊急の対応が必要な泌尿器の問題として挙げています。尿を出せない状態は命に関わることがあるため、何度も力むのに普段どおりの尿が出ない場合は、次の定期診察まで待たないでください。

相談を待つ間に水を制限したり、人用の鎮痛薬を与えたり、手元に残っている抗生物質を飲ませたりしないでください。獣医師から尿のサンプルを求められた場合は、指定された採取方法と保管方法に従ってください。 VCAの尿検査の解説 では、尿の見た目や濃さ、化学的性質、顕微鏡検査のすべてが重要である理由を説明しています。

散歩と後片付けを楽にするには

時間と周囲の環境が許す安全な場所では、犬ににおいをかがせてあげましょう。においをかぐことは、犬が散歩中に周囲を調べる方法の一つです。興味を引くにおいのたびに引っ張って遠ざけるより、落ち着いて立ち止まる時間をつくるほうが、たいていは効果的です。危険な場所や立ち入りが私有地に関わる場所、植物を傷めるおそれがある場所では、明るい声で呼び戻すか、簡単な歩行の合図を使いましょう。その場を離れることができたら、ほめてあげてください。

室内で失敗した場合は、ペットの尿用クリーナーを製品ラベルの指示に従って使い、原因を探る間は同じ場所に再び近づけないようにしましょう。後から叱るのは避けてください。これまで室内での排泄をきちんと覚えていた犬が、急に室内でマーキングや排尿をするようになった場合は、行動だけが原因だと決めつける前に獣医師の診察を受けましょう。家庭環境の変化、新しいペット、来客、リフォーム、留守番などは関係している可能性がありますが、病気の可能性を否定するものではありません。

不安が関係していそうな場合は、当店の 犬に突然見られる不安や行動の変化についてのガイド も、獣医師や行動の専門家に相談するために、環境の変化や手がかりを整理するのに役立ちます。

簡単な観察チェックリスト

数日間、トイレに行った時刻、尿の量が少なそうか多そうか、排泄した場所や表面、姿勢、においをかいだか、水を飲んだ量、室内での失敗、痛みやなめる行動の有無を記録しましょう。散歩中だけ、室内だけ、あいさつの後だけ、またはどのような状況でも変化が起きるのかも記録してください。安全に撮影でき、受診を遅らせない場合は、排尿時の姿勢を短い動画に撮っておくのも役立ちます。記憶だけに頼らず、記録を診察時に持参しましょう。

すべてのマーキングを読み解くことが目的ではありません。普段の散歩で見られるパターンと注意すべき変化を見分け、犬が快適に過ごせるようにし、獣医師にできるだけ正確な経過を伝えることが大切です。

よくある質問

犬が排尿のために立ち止まるたび、何かを伝えているのでしょうか?

いいえ。犬は、膀胱にたまった尿を出していることもあれば、少量のにおいを残していることもあり、1回の散歩でその両方を行うこともあります。においをかいだか、どこで排尿したかは判断材料になりますが、1回の排尿だけで完全なメッセージを読み取ったり、病気だと証明したりすることはできません。

マーキングと通常の排尿は、どう見分ければよいですか?

マーキングでは、特に垂直な面など、複数の物に少量ずつ尿をかけることがよくあります。一方、膀胱にたまった尿を出す場合は、1か所でより多く排尿するのが一般的です。ただし、少量の排尿を何度も繰り返すのは病気のサインのこともあるため、新しい変化や痛がる様子がある場合は獣医師に相談してください。

犬はなぜ排尿する前ににおいをかぐのですか?

においをかぐことで、犬はほかの動物が残したにおいの手がかりを調べ、次にどうするかを判断します。マーキングの前に行うこともありますが、周囲の環境を探索しているだけの場合もあります。

濃い色の尿やにおいの強い尿は、必ず脱水が原因ですか?

いいえ。尿の色が濃くなるのは尿が濃縮されている場合にも起こりますし、においが強くなる理由も一つとは限りません。変化が続く、血が混じる、濁っている、痛がる、排尿回数が多いといった場合は、色やにおいだけで判断せず、獣医師の診察を受けてください。

犬はなぜ興奮するとおしっこをするのですか?

強い興奮を伴うあいさつや恐怖、服従を示すようなボディランゲージの際に、尿を漏らす犬もいます。あいさつは静かに行い、叱るのは避けてください。行動が新しく始まった、長く続いている、ほかの排尿の変化を伴っている場合は、獣医師に相談しましょう。

排尿回数が多い場合、緊急性があるのはどんなときですか?

何度も力むのに尿がほとんど出ない、まったく出ない、排尿時に鳴く、または尿が赤い・血が混じっている場合は、すぐに獣医師へ相談してください。尿を出せない犬は、救急診療が必要になることがあります。

まとめ

尿は、犬がにおいを通じて周囲を理解する世界の一部です。ただし、最も適切に判断するには、状況と全体的なパターンを見ることが大切です。安全ににおいをかげる時間をつくり、マーキングと膀胱を空にするための排尿を見分ける一方で、行動の観察と病気の判断は分けて考えましょう。排尿の回数、量、におい、色、快適そうかどうか、トイレのしつけに変化があった場合は、早めに獣医師へ相談してください。

さらに詳しく: VCA:犬のマーキング行動についてMerck Veterinary Manual:犬の行動上の問題についてAKCによるマーキングと排尿の違いVCAによる尿検査の解説VCAによる緊急性のある泌尿器症状の解説VCAによる尿路感染症の解説、および PetMDによる尿路感染症(UTI)のサインの解説

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